ノコギリヤシは、日本では厚生労働省から承認されていないために健康食品として提供されていますが、ドイツやフランスなどのEU諸国では前立腺肥大への有効性を医学的に認められており、医療現場での治療に用いられています。

目的はどんな事

その作用機序は、5α-reductasという還元酵素の活性を阻害するというもので、前立腺肥大の原因物質DHTの生産を抑制するということを目的としています。

DHTとは、悪玉男性ホルモンとも呼ばれている物質で、テストステロンと5α-reductasが結合することにより、作りだされます。この物質が前立腺肥大の組織を過剰に増殖させることにより、尿道が圧迫されるので、夜間頻尿などの様々な症状が発生することになります。

なお、5α-reductasは前立腺以外にも生え際から頭頂部の毛根内部にも存在しているので、DHTはこの部分にも生産されることになります。さらに、この部分の男性ホルモン受容体と結合した場合は、脱毛因子を誘導することにより、ヘアサイクルを狂わせるという症状を引き起こします。
これにより、生え際から頭頂部の髪の毛が太く長く成長できなくなり、軟毛化が進行することになります。

これが、男性の薄毛の大部分を占めているAGAが発症する仕組みで、DHTが悪玉男性ホルモンと呼ばれている理由でもあります。つまり、前立腺肥大とAGAという中年以降の多くの男性が悩みを抱えている尿と髪の毛の不調の両方の原因に関与しているということです。

AGAにも有効

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このために、前立腺肥大の改善に効果を発揮するノコギリヤシは、同じ物質が原因で発症するAGAに対しても有効ということになります。何故なら、原因物質の生産が抑制されるので、脱毛因子が誘導される頻度も少なくなり、ヘアサイクルが正常な状態に回復するからです。

ちなみに、飲む育毛剤として知られているプロペシアは、ノコギリヤシをモデルに作られた内服薬で、元々は前立腺肥大を改善するために開発されたものです。後に、AGAに対しての有効性が認められたために、こちらの症状に対しての治療薬としても利用されるようになっています。

日本では前立腺肥大に承認済

なお、日本では、プロペシアの主成分finasterideの前立腺肥大に対しての有効性はノコギリヤシ同様に認可していません。このために、国内での適応症は前立腺肥大のみです。
これは、臨床試験を実施していないためで、効果がないというわけではありません。
ノコギリヤシも同様であり、医薬品として認められていない理由は、薬事法上の都合によるものです。

このために、ノコギリヤシは、プロペシア同様にAGAに対しての効果を発揮する可能性は極めて高いと推測できます。また、医薬品として承認されていないのは、生え際から頭頂部の薄毛に悩んでいる人にとっては、必ずしも悪いことではありません。何故なら処方箋なしで気軽に購入できるからです。