DHTは、中年以降の男性の多くが悩んでいる薄毛と夜間頻尿を引き起こす原因物質ということで、悪玉男性ホルモンとも呼ばれています。この物質の生産を抑制することにより、不調を解消するのがノコギリヤシとプロペシアです。
これらを併用した場合は、どのような効果が得られるのでしょうか?
この問題について、検証していくことにします。
プロペシアとノコギリヤシの関係
飲む育毛剤と呼ばれているプロペシアは、1990年代の前半にアメリカで開発された抗アンドロゲン薬finasterideの1㎎錠です。このfinasterideは、元々は前立腺肥大の治療薬として開発されたもので、作用機序は5α-reductaseという還元酵素を阻害するという内容です。
この5α-reductaseは、男性ホルモンのテストステロンと結合することにより、前立腺肥大の原因物質DHTを作りだします。このために、この還元酵素を阻害してしまえばDHTの生産量が抑制されるので、前立腺肥大のリスクも少なくなります。このようなfinasterideの仕組みは、ドイツやフランスなどのEU諸国で前立腺肥大の治療薬として使用されているノコギリヤシをモデルとしたものです。
finasterideとノコギリヤシの違い
ただし、finasterideとノコギリヤシの作用機序は全て同じというわけではありません。
これは、前者が人工的に作り出した物質であるのに対して、後者は自生しているヤシ科の植物の果実から抽出した天然成分ということが関係しています。
つまり、finasterideはノコギリヤシの改良版ということです。
ちなみに、具体的な違いはfinasterideは、生え際から頭頂部にかけての毛根と前立腺に存在している5α-reductaseのⅡ型にのみ作用するのに対して、ノコギリヤシは皮脂腺内に存在しているⅠ型の5α-reductaseの活性も阻害するということです。前立腺肥大やAGAには、Ⅱ型の5α-reductaseの関係性が強いと考えられているので、finasterideはこれらの症状に対して効率的に作用するということになります。
併用は可能か?
作用機序に若干の違いがあるので、ノコギリヤシとプロペシアは併用することも可能です。
ただし、それによりどのような効果を得られるのかは明確ではありません。
何故なら、Ⅰ型5α-reductaseのAGAや前立腺肥大への関与は、はっきりとしていないからです。
また、経済的な負担も大きくなるので、両者を併用する必要はないということが現時点での結論です。